vol.25 根の側面にドリル穴!? MTAセメント封鎖と精密根管治療
根の側面にドリル穴!? MTAセメント封鎖と精密根管治療のケース
歯ぐきの「腫れ」と
「膿」が気になる
こんにちは、石橋デンタルクリニック大泉のブログへようこそ。歯科医師の川瀬です。
主訴は、左下の歯肉の「腫れ」と「膿」
左下の歯肉の腫れと膿が気になり、30代の女性が来院されました。まず顎全体を写すレントゲンを撮影して、違和感を訴えられていた部位を確認。歯の周囲が赤く腫れ、黄色い膿が出ていて、歯周炎が進行しているのが確認できました。
レントゲンで確認してみると、土台と根管治療の間付近の黒い透過像が大きくなっており、この周囲で何か問題が起きていそうなことが予測できました。
根の内部で起きていた症状とは!?
マイクロスコープの映像に映った、腫れと膿の原因
被せ物と土台を外して、マイクロスコープで根の中を除いてみると、不可解な画像が目の前に映りました。明らかに、根の方向と違う方向に、削ったような痕跡がありました。蓋をしているモノを外してみると、腫れと膿の原因がハッキリしました。
根の壁面に「ドリルが貫通した穴」が空いていた
歯根の側面に穴が空いていたのです。最初に根管治療をされた術者が、根の方向を間違えてドリリングしてしまい歯根の側面を貫通させてしまった痕跡だと思われました。そして穴を開けてしまっていた部位の適切な処置ができていなかったため、それが原因で感染が起きてしまっていました。
穴を封鎖して、
精密根管治療を開始
MTAセメントで根の壁面の穴を封鎖
まず穴を適切に封鎖するために、組織の誘導能があるMTAセメントという最新の歯科材料を使い封鎖してから、当院ではマイクロスコープを使い精密根管治療を行いました。
MTAセメントとは?
MTAセメントとは、歯科治療で用いられる特殊なセメントです。主に以下のような特徴があります。
- 生体親和性:体内にあっても安全で、組織に優しい。
- 発硬性:湿った状態や血液全体が固まる。
- 密閉性: しっかりと歯の穴や隙間を塞ぎ、細菌の侵入を防ぎます。
- 再生促進:傷んだ歯やその周辺組織の再生を助ける効果がある。
これにより、歯の神経治療や修復、欠損部の修復などに使われます。
*MTAセメントの治療事例はこちら
精密根管治療後の治療経過
治療後2ヶ月
根管治療をし直してから2ヶ月が経過したところ。穴の封鎖状況も根管治療も予後良好。歯肉の炎症が止まり、骨も少し回復して、土台が安定してきているのが見受けられたため、上物の歯をセットしました。
治療から3年経過
治療から3年が経過。治療後は3ヶ月に1回必ずメンテナンスに通っていただいており、予後はとても良好で、歯根周囲の骨がだいぶ回復してきました。この回復状況に患者さんもとても喜んでいただいています。完治まではもう少し。引き続き、継続的なメンテナンスと経過観察が必要です。
まとめ
マイクロスコープとMTAセメントは、精密根管治療に欠かせない神器
今回のケースでは、歯科用マイクロスコープとMTAセメントを取り扱っていたため、確実で予後が安定する治療を行なうことができました。もしも、歯科用マイクロスコープとMTAセメントがなかったとしたら、当院でも手をつけられなかったかもしれません。それくらい、歯科用マイクロスコープとMTAセメントは、精度の高い根管治療を行なう上で必要な設備になっております。
3ヶ月に一度は、定期的にメンテナンスを受けて予防しましょう!
私たちはどうしても、痛みがある部位ばかりに意識がいってしまいがちです。しかし、歯ぐきの病気である歯周病は、初期は痛みがありません。そのため、病気の進行に気付きにくい特徴があります。歯周病は、痛みがないままジワジワ病気は進行し、痛みを感じた時は重度になっているそんな病気です。今回のケースでは、早めに気付き、早めに対処できたため、患者さんご自身は大きな痛みを感じる前に治療に入ることができ、比較的、不自由なく安定した生活を送れていました。お口の状態は、生活環境や仕事の忙しさ、ストレスなどにより、大きく変化します。そのため、3ヶ月に一度は、定期的なメンテナンスを受けて予防をすることをおすすめしております。自分の歯が一番です。ご自身の歯、生涯大切にしてくださいね!