vol.22「噛むと奥歯が痛い」を主訴に、50代の女性が来院されたケース。
CT画像とレントゲン画像で痛む箇所を確認
「噛むと奥歯が痛い」を主訴に、50代女性が初診で来院。問診してみると、痛む場所は、過去に他院で何度か根管治療をやってもらっている箇所とのことでした。痛む付近にはインプラントが入っていました。インプラントと骨の状態も把握することも必要なために「レントゲン」と「CT」を撮影し、「レントゲン画像」と「CTの3次元画像」の両方で確認をしました。
抜歯してインプラントか? or 再植治療か?
CT画像でもレントゲン画像でも、左下の一番奥の歯(7番)の根の先に大きな病変があることを発見。治療方法としては、抜歯をしてインプラントを入れる選択肢もあるが、当院としては、まずは患者さんご自身の天然歯を残せる再植治療をご提案しました。患者さん自身としても自分の歯を少しでも長持ちさせたい思いがあり再植治療をすることになりました。
歯の再植治療とは!?
歯の再植治療とは?
一度、歯を抜いて治療をし、抜いた歯をまた元に戻して生着させる治療法です。
治療手順としては…
1.根の先端に病変がある一番奥の歯(7番)を、一度抜きます。
2.口の外で、抜いた歯の根の感染部位を除去します。
3.口の外で、根管内にお薬(MTAセメント)を詰めます
4.その場で、治療した歯を抜いた元の位置に戻す。
5.口の中で、歯を保定する(保定する方法もいろいろある中で、今回は糸で歯肉に縫合して保定を行いました。)
これを同日内に一気に行なう治療です。
再植治療から3ヶ月後、生着を確認
再植治療から3ヶ月が経過した時の画像です。歯列に戻した歯の根の周囲の病変(黒い透過像)が消えて、歯周組織と生着しているのがわかります。術後、順調に回復していましたので、この後、歯の土台(コア)を入れて、上物の歯(クラウン)の治療に入りました。
再植治療から3年、骨も回復。しっかり安定。
再植治療から3年経過した画像です。術後3ヶ月後に生着した画像と比べて、さらに骨もしっかりと回復して噛み合わせも安定しているのがわかります。
再植治療は、患者さんメリット高い。治療難易度も高い。マイクロスコープ+治療技術+治療スピードが必須。
再植治療は、感染したご自身の歯を一度抜歯し、修復して再利用する治療方法なので、患者さんにとっては自分の歯を長く使える可能性がある治療法なので大きなメリットがあります。
一方で、再植治療は、マイクロスコープと治療技術と治療スピードの3点セットが必要な治療です。歯の根管内は肉眼で捉えられないほど細かく複雑であり、顕微鏡下での繊細な治療になります。また、一度抜歯した歯の根は乾燥してしまうと口の中で生着しなくなります。そのため歯科医師としてはとても難易度の高い治療であるため、どこでも誰でもできる治療ではありません。
とはいえ今回は、再植治療の選択肢がなければ、抜歯するケースでした。今もご自身の歯を使えていることに、患者さんにはとても喜んでいただきました。そしてそれが私たちにとってもとても嬉しいのです。
注:すべてのケースで再植治療ができるわけではありません。感染状況や歯や骨の状況によっては再植治療ができないケースもあります。状況により異なりますので予めご了承ください。