vol.20 親知らずの歯牙移植。右アゴが腫れているので診てほしい
右顎の腫れ、根が割れていた。
「右顎に違和感があり、腫れているので診てほしい。」と訴えがあり、50代男性が来院されました。
問診から資料採りをして口腔内を診察したところ、右下6番目の大臼歯の根が割れているの見つかり、そこが原因で歯ぐきが腫れているのがわかりました。
なぜ根が割れてしまったのでしょうか?
今後の治療計画を立てる際に、同じことが繰り返し起こらないよう、根本的な原因を見極めて根治療法について当院ではまず考えます。そのため、根が割れてしまった歯だけでなく、周囲の歯やお口の中全体もよくよく観察していきます。すると、歯の一部が磨り減っていることが分かりました。「歯ぎしり」が原因でした。歯ぎしりにより、右下6番の大臼歯に過度の力がかかってしまったため、根が破折してしまったのです。
噛む力が1本の歯に集中してかかると破折の原因になる
成人男性が歯を食いしばった時の力は、意外と大きな力で、平均59kg(おおよそ自分の体重くらいの力)がかかると言われています。(テーマパーク8020スポーツと歯科記事参照)それが、一本の歯に集中的に力が加わってしまうと、今回のように歯や根が噛む力に耐えられずに割れてしまう場合もあるのです。
親知らずの「自家歯牙移植」治療
今回の根の破折したケースでは、状況的に抜歯するしか選択肢がなかったのですが、右下の奥歯に親知らずの歯が残っていたため、抜歯した部分に親知らずを移植する治療法「自家歯牙移植」をご提案させていただきました。患者様も、はじめ「抜歯」と聞いたときは少し落胆した様子でしたが、親知らずの移植法を聴いて安心した表情になられて、治療を進めることになりました。根が破折した歯を抜歯して、右下の親知らずを移植したら、最初のうちは歯をワイヤーで固定します。約2週間程したら移植した親知らずの根の治療を開始します。親知らずの歯も一度抜歯しているため、神経が死んでしまうので根の治療が必要なためです。
術後1ヶ月後、根の治療途中の状況
術後3年、経過良好
親知らずを移植して、根の治療をして、移植から約3ヶ月に最終的な歯が入り治療は終了しました。それからきちんと定期的にメンテナンスに通っていただき、術後3年経過したレントゲンです。移植した歯もしっかりと骨とくっついています。歯の周りの骨もきちんと回復していて術後の経過は良好です。患者様も喜んでいただいています。